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能登の復興       2024.1.29
地震発生から4週間が経とうとしている。地震で亡くなった人の人数が236人に上り、なお安否が確認出来ない人が19人いる。地理的制約があったとは言え、もっと早く救助態勢が投入できればもっと多くの人を助けられただろうと思うと心が痛む。地域社会が壊滅的被害を受け、一次避難だけでなく、二次避難で住んでいた場所から離れる住民も多い。
日本列島は4つものプレートが押し合って出来た皺で、地史的に言えば過去に大きな地殻変動が何度も起こったはずだ。そのような場所に私たちは住んでいる。近年においても強大な地震が起こってあちこちで大きな被害をもたらした。阪神淡路地震、東日本地震、熊本地震・・。加えて地球温暖化による気象災害が毎年のように起こっている。だからといって災害の起こった所に住まないというわけにはいかない。災害に強い地域社会を作ることが求められる一方、災害が起こったときに直ちに人命救助や避難が出来、すばやく復興に取りかかれる態勢を国として常に準備しておく必要がある。これこそが国の安全保障と言うべきだ。そう考えると現状は全くこれに対応出来ていない。今回の能登復興を先例としてまず復興に全力で取り組んでもらいたい。これは人命を守り、地域を再生することだ。そのためにも、国の大事な国費を巨費として殺戮と破壊のための戦争準備に使ってはいけない。

 

オスプレイ使えへんの? 2024.1.8
元旦の夕刻大きな揺れを感じた。どこかで大きな地震が起こったことは直ぐ分かった。ラジオのニュースは、能登地方で大きな地震が起こり、津波から避難するようにとの呼びかけを繰り返していた。3日の朝刊に大きく地震の被害の様子が報じられていて、震源は能登半島で最大震度7となっていた。その後テレビの映像からもその被害の甚大さが明らかになってきたが、被害の全容は依然として不明だった。多くの家屋が倒壊したが、道が寸断されて救助や救援が届かない現状を訴えていた。福島に近い栃木県北部で東日本大震災を経験し、巨大地震とその後の頻繁な強い余震の恐怖がよみがえる。幸い家は壊れず、車のガソリンが満タン近く入っていたので、福島からの避難者の避難所に支援物資を届けることが出来た。今回は半島という地形から救助や救援が届かないという。毎日死者数と安否不明者数が増加している。支援物資が不足している声が増加している。救助と救援は一刻の猶予もない。避難も必要だ。オスプレイに救助隊や重機、支援物資を大量に積んで孤立している地域に届けられないのか。オスプレイが離着陸できる自衛艦を能登沖に派遣して補給を支援できないのか。出来ること何でもやって! もどかしく、とても辛い。

Brothers and sisters          November 17th, 2023

Shalom! Shalom! Shalom!
Salaam! Salaam! Salaam!
Stop the fighting.
Stop the killing.
Stop the genocide.
People living in Palestine are all Palestinians.
You are brothers and sisters.
Let's greet Shalom! Shalom! Shalom!
Let's greet Salaam! Salaam! Salaam!

お尻に火がついていますよ(2)     2023年10月3日

10月2日付けの朝日新聞に、同新聞が分析した結果として「9月も史上最も暑かった」という記事があった。1900年初期から比べると4℃ほど高かったことになる。お尻の火がいよいよ体に回ってきている状況だ。温暖化防止に全ての人が本気で取り組まなければ後戻りが出来なくなる時点にきている。同じ新聞の数日前の記事には、温暖化でお寺の苔庭の苔が衰退しているとの記事があった。これも既に研究者によって警告されていたことだ。美しい苔庭で知られる嵯峨野の祇王寺の庭も修復のために苔が一部が取り除かれ裸地になっていた。これから京都は秋の観光シーズンで、夜も観光客をおびき寄せるためにあちこちでライトアップが行われ、生き物の生理が乱され、エネルギーが浪費される。京都の美しい苔庭や紅葉は先人が残してくれた金の卵を産む遺産だ。この卵を産む鶏を大事に育てていけば、毎日一個金の卵を産んでくれる。夜まで煌々と光をあててもっとたくさん卵を産まそうとすれば鶏は確実に死んでしまう。

ラグビーワールドカップフランス大会が始まった    2023.9.9

ラグビーワールドカップフランス大会が始まった。4つのプールに分かれて20チームが予選リーグを戦う。オープニングゲームは、プールAのフランスがニュージーランドを27対13で下し、フランス大会を大いに盛りあげることになった。日本は、プールDで明日チリと初戦を戦う。前回2019年の日本大会では予選リーグを突破し、ベスト8まで進んで日本のラグビー人気が一気に高まった。今回はベスト4を目指す。同じプールのランキング14位の日本は、アルゼンチン(6位)、イングランド(8位)、サモア(12位)、ウルグアイ(17位)のうち、上位2チームに入らないと決勝トーナメントに進めない。日本大会では試合日程が恵まれていたし、日本はそれ程マークされていなかった。この4年間どのチームも力を蓄えてきたはずだ。一方、日本はワールドカップ前のテストマッチで1勝5敗と全く奮わなかった。問題は「司令塔」不在だ。スタンドオフは司令塔としてゲームの状況を見て的確なパスやキックあるいは自ら突破してゲームを動かす。またプレースキッカーとしても得点を稼ぐキープレーヤーだ(フランス対ニュージーランド戦でプレースキックがどれ程重要か分かる)。今回スタンドオフとして選ばれた松田も李もその意味でベストメンバーとは言えない。加えて二人ともスタンドオフ以外のポジションでは期待できない。小倉がフルバックメンバーに入っていて、スタンドオフも出来るが、国際試合の経験が少なく全く未知数だ。実際初戦のチリ戦では松島をウイングに上げて、代表ではウィングで使っていたマシレワをフルバックに使う。松島は超一流でウイングもこなすが、フルバックの松島の的確なキックと突破、さらに守備力の高さを使えないのは損失だ。ここで、なぜ山沢を代表選手に入れなかったのかの疑問が湧く。山沢は、スタンドオフ、フルバックとも出来る。スタンドオフでは状況に応じて広い視野でキックやパスを繰り出しゲームを作るプレーヤーだ。プレースキッカーとしても経験が豊かだ。フルバックとしての山沢の高い守備力は日本を救うはずだ。賢いプレーのできるスタンドオフ山沢を入れなかったのは残念だ。ともあれ日本代表の健闘を祈るばかりだ。

お尻に火がついていますよ     2023年8月30日
お盆が過ぎてもう9月にもなろうかというのに今日も京都府に熱中症警報(アラート)が出された。近年の京都府の8月の熱中症アラートの発表回数は、2021年7回、2022年14回だったが2023年は26回出ている。朝日新聞が気象庁の7月の気温を分析したところ、7月の月平均気温が25.96℃で、データのある126年間で最も暑かった(朝日新聞8月2日)。またこの126年間で年平均気温は1.5℃上昇したという。2015年にパリで開かれた国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)では、温室効果ガス排出削減等により2020年以降世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をすることが目標として掲げられ、先進国・途上国を問わず温室効果ガス排出削減に向けた取り組みが求められた(パリ協定)。日本で言えば、2020年以降3年で1.5℃上昇に達してしまった。1992年ブラジルで行われた国連気候変動枠組み条約で、大気中の温室効果ガスを安定させるとし、これに伴い1997年に京都で開かれたCOP3では先進国の温室効果ガス削減目標が設定された。しかしこれ以後も世界の温室効果ガス排出量は増え続け、2022年には過去最大の排出量になった。日本だけでなく、世界各地で熱波、大雨・洪水、旱魃、森林火災、巨大台風(サイクロン、ハリケーン)などが多発し、多くの被害をもたらしている。温暖化が進行すればこうした災害が頻発することは、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)の初期の報告書から予測されていた。これまではこうした災害が起こっても温室効果ガス排出による地球の温暖化との関係を意図的に曖昧にしてきたが、今や「地球温暖化による」と言わざるを得なくなった。具体的削減目標が示された京都議定書が採択された国でありながら、日本は一貫して後ろ向きの対応しかやってこなかった。脱炭素社会を目指す政府のグリーントランスフォーメーション(GX)の主要技術とされる原発再稼働・建設やアンモニア・水素利用などは脱炭素技術でもなんでもない。期待される自然エネルギー開発も大きな環境負荷を伴う。大事なことは、まずエネルギー消費を抑えることだ。外出してどこかの建物に入るとどこも冷房設定温度が低く、寒さに耐えられず早々に退出する。我が家はエアコンのある部屋には温度計があり、室温30℃になるように設定して扇風機と併用している。普段は扇風機と団扇が主に活躍している。熱中症アラートが出ると、「不要不急の外出は避けて室内に留まるように」との放送が流れる。「不要不急の自動車による外出は避けて公共交通機関を利用するように」、「無駄なエネルギー消費は控えるように」との指示はない。温室効果ガス排出を続けて地球の温暖化の不可逆点(tipping point)を越えてしまったら一方的に温暖化が進む。かちかち山の狸のではないが背中の薪が燃えている。このまま焼け死ぬのか。はたまた温暖化の泥船に乗って皆一緒に溺れるのか。個々人の知性が問われている。Do you wish to go extinct as Homo sillyens or survive as Homo sapiens?

壮大な実験    2023年8月25日

実験を行う場合、母集団(調べたい対象の全数)を全て調べれば良い。しかし、母集団が大きいときは、全数調査は困難なのでその中から標本を抽出して調べる。例えば、NHKが8月に実施したRDDという方法で実施した世論調査は、2,547人に設問して、その内48%にあたる1,223人から回答を得たとなっている。日本の18才以上の人口は107,445,000人(2022年)で、世論調査の標本数は成人人口の0.0024%、回答数で言えば人口の0.0011%に過ぎない。この少ない標本数から日本人(母集団)の意識を推定しても、大きな誤差を伴い信頼度は高くない。標本数を多くすれば母集団の推定値の精度があがるが、世論調査は標本数を多くするのが簡単ではないことを示している。
 しばらく前の朝日新聞(7月30日付け)の記事に、新型コロナウイルスの家庭療養者のために都道府県が貸与するのに確保した血中酸素測定器(パルスオキシメーター)約176万5300個の内、貸与した機器の約30万個が返却されていないという記事があった。無料で貸与された機器は療養終了後は速やかに返却するもので、返却のための封筒やレターパックが同封されていた。確保した機器(全てを貸与したとは限らない)の内、未返却の機器数は17%にも上った。朝日新聞が調査した都道府県別の未返却の機器数が載っていたが、貸与数が県により異なり、また同じ機器を複数回貸し出した自治体もあるので、単純に未返却数だけで回収率を評価出来ない。また、地方自治体がどれ程熱心に返却に係わったかも影響したであろう。市町村も別に貸与しているのでさらに複雑だ。限られたネット情報で見ると、神奈川県は延べ9万個以上貸与して7千個が未返却(7.8%)だった。埼玉県は延べ28,700個貸与し、6,835個(23%)が未返却で、沖縄県は延べ21万個貸与して2万個(9.5%)が未返却だった。壊れたり捨てたり忘れたという理由で返却されなかったものもあったそうだが、返却されなかった機器のほとんどは”猫ばば(横領)”されたと言うことだ。データが圧倒的に少ないが、少なく見積もっても10人に一人(1割)が”猫ばば”したというのが事実だろう。図らずも日本人の倫理観をテストする実験になっていて、延べ貸与数は全国で200万を超えるであろうから標本数が対象人口の数パーセントに相当する壮大な実験をやったことになる。日本人の道徳がここまで劣化したことに暗澹となる。個々人が高い道徳を維持することは意識の問題なので費用はかからない。しかし低い道徳の社会は、不正を防ぐために膨大な費用がかかる。またその様な社会では進歩が期待できない。道徳心の高い社会は、今様の言葉で言えば「コスパ」がすこぶる高い。どちらが得かはおのずと明らかだ。

頑張れ 出町桝形商店街!     2023年7月28日

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1羽の蝶がノーベル賞学者を創った       2023年3月16日
ポール・ナース著 生命とは何か(What is life? understand biology in five steps) 竹内薫訳 ダイヤモンド社 2021年を読んだ。ポール・ナースは2001年に細胞周期の研究でノーベル生理学・医学賞を与えられた英国生まれの細胞生物学者で、この本は一般向けの著書としては初めてだと言う。訳本の表紙と中表紙にヤマキチョウ(蝶)の絵があり興味をそそられた。著者は少年の時1羽の蝶(ヤマキチョウ)がきっかけで、生物学を真面目に考えるようになったと述懐する。飛んでいる蝶を見て、生きているって一体どういう事なんだろう? 生命って、何なんだろう? という問題を考えてきた。本書では、この疑問に5つのステップ(1.細胞、2.遺伝子、3.自然選択(訳書は自然淘汰)による進化、4.化学としての生命、5.情報としての生命)から答えようとする。
ステップ1細胞:”細胞はあらゆる生命体の基本的な構造単位であるだけでなく、生命の基本的な機能単位である”という「細胞説」は細胞の観察技術の進歩に伴って導き出された。さらに生命の基本単位である細胞は細胞から作られる(細胞分裂)という事実に到達する。著者は細胞がどの様に機能するかを理解することで、生命の仕組みの理解へと近づくとステップ1を締め括る。
ステップ2遺伝子:メンデルの話からクリックとワトソンのDNAの二重らせん構造の決定、遺伝情報の解読・読み取りから人ゲノム解析までの歴史が語られる。しかし本章の中心は、著者がノーベル賞を受賞した細胞周期の研究だ。それは細胞分裂の周期をコントロールしている遺伝子を特定し、その機能を見つけることだった。分裂酵母の中から変異細胞を見つけ出すというとてつもない努力から、失敗した実験をゴミ箱から回収するという幸運を経て、ついに細胞周期をコントロールしているcdc2という遺伝子を特定する。40年という地道な努力と情熱の結果だ。著者曰く「科学において単純な実験と考えは、勤勉さと希望、そして時折の幸運なタイミングと合わさったとき、まばゆい光を放つ」。DNAの10億文字に一回起こる程度しか起こらない変異を持つ細胞を見つけ出すことから始まった細胞周期の研究は、次の自然選択”という章につながる。
ステップ3自然選択:自然選択は多様な生物種を作り出す。昆虫少年であった著者は子供のころから驚くべき甲虫の多様性を実感していた。不幸なことに西欧では自然選択を否定する多様な生命は神が作り出したという創造神話がある。後に著者は牧師との対話から宗教と決別する。チャールズ・ダーウインはビーグル号の世界一周旅行で得られた観察と証拠から自然選択説を著書「種の起源」で公にする。自然選択による進化が起こるためには生命体が三つの決定的特性(繁殖する能力、遺伝システムを備える、遺伝システムが変異を起こし次世代に受け継がれる)が必要であることを述べる。さらに自然選択が効果的に機能するためには、”生物は死ななければならない”という重要なポイントを述べる。また、自然選択による進化の重大な結論は、全ての生命が同じ祖先で繋がっていることだと言う。つまり”我々人間は地球の全ての生命と縁続きである”という著者の思想につらなる。つまり酵母で見つけた細胞周期をコントロールしている遺伝子は、全ての生物種で共通して働いていることを導き出す。最後に宗教を否定して、科学が世界を論理的に理解する道を示してくれたと述べる。
では著者が東洋に生まれていたら・・。仏教はあらゆる生き物は同じで殺生を禁じ、また質素・倹約を薦める。これは、”我々人間は地球の全ての生命と縁続きである”という著者の思想に通じる。また殺生を禁じ、質素で倹約的生活を薦めることは、生物多様性や資源保護の大切さを教えている。神道も然り。神は自然に宿り、我々は自然を敬い大切にする。長い年月の中で育まれてきた東洋の宗教と科学は対立しない。
ステップ4化学としての生命:著者は”生命は化学である”と明確に主張する。命のほとんどの側面は、物理学と化学の観点からかなりうまく理解出来ると述べる。あらゆる生物の中で、何百何千もの化学反応が同時進行していることが分かっている。こうした化学反応が生命を司る分子を作り出し、それが細胞の成分や構造を形作る。化学反応はまた、分子の分解も行い細胞成分のリサイクルも行う。これらの生体内の膨大な化学反応のことを代謝と呼ぶ。生体を維持、構成するために細胞内で同時発生する無数の化学変化は無秩序に見えるけど、実際は非常に高度な秩序を保っている。著者が明らかにした細胞周期を制御するcdc2遺伝子もそうした化学反応の秩序化にに係わっている。生体内の無数の化学反応が高度に秩序化されていることを理解するには、生物がどの様に情報を処理しているかを理解しなければならない。
ステップ5情報としての生命:生物の複雑なシステムが合目的に働くには、様々な情報は細胞、器官、個体、集団さらに生態系の様々な種の間にさえシグナル達経路として伝達される。しかし重要な部分はその後に続く。生きているシステムは人間によって理にかなうように設計された制御回路よりも、非効率的かつ非合理的に構築されていることが多い。自然選択を生き残る生命体は「何とかやっていかれる」から存続するのであって、必ずしも、最大効率、あるいは最短のやり方をする訳ではない。こうした複雑さと余剰が生体シグナル伝達ネットワークと情報の流れの分析を難しくしていると述べる。しかし一見「何とかやっていかれる」と見えるのは、生体のどのレベルでも変動する(時には予測不能な)環境に自然選択の結果最も合理的に適応しているからだと見るべきだろう。そうした生物学の複雑さを究明するために、「生物学者はこれまで以上に数学者やコンピューター科学者や物理学者、さらには哲学者の助けさえ必要になるだろう」と明言する。卓見だ。
世界を変える:この章は、感染症との闘い、がんの新しい治療法、遺伝子編集の未来、IPS細胞の可能性、人口増に伴う問題、「合成生物学」のインパクトと言った話題に著者の示唆に富んだ考えが披瀝される。ノーベル賞科学者のジョージ・ポーターの「応用科学を養うために基礎科学を飢えさせることは、建物をもっと高くするために建物の基礎を節約するのと似ている。大建造物が崩れ落ちるのは時間の問題だ」との言葉を引用する。まさに今日本の科学技術が崩れ落ちている現状を言い当てている。また、科学技術が我々の生活や経済に与える大きな影響に、十分気付いている政治指導者はほとんどいない。だが、政治の出番は、科学より「後」であって「前」ではない。この順番が逆になった時、どれほど悲惨なことになるか、世界は幾度となく目撃してきたと述べる。これも日本の科学技術の現状につながっている。
生命とは何か?:ついにこの本の本題にたどり着いた。「とてつもなく大きな問いだ」で始める。著者は生命の定義に三つの原理を提示する。一つ目が自然選択によって進化する能力。第二に生命体が「境界」を持つ物理的存在であること。細胞生物学者の面目躍如だ。第三は、化学的、物理的、情報的機械であること。この三つが合わさって初めて生命は定義されるとする。
ヤマキチョウが各章を飛びながら最後の結語に導いてくれる。『この地球上の生命は脅威に満ちている。生命は常に我々を驚かせるが、途方にくれる多様性にも関わらず、科学者はそれを理解しつつあり、その理解は、我々の文化や文明の礎となっている。生命とは何かを理解し続けることで、人類の運命はより良き方向に向かうだろう。』

隣人           2023年2月22日
全ての人々は隣人であり友人だ。誰も隣人や友人を傷つけ殺してはならない。
友情と平和を!
We are all neighbors and friends. We should not hurt and kill each other.
Friendship and Peace!

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Michel Quarez (1994)

姥捨山                2023年2月16日
今昔物語に、「今は昔のこと、信濃国、更科というところに住む人があった。・・・」で始まる年老いた叔母を山に捨てに行く姥捨山の話がある。岸田首相は、5月の連休明けに新型コロナの分類を現行の2類から、季節性ンフルエンザ同等の5類へ引き下げることを決定した。昨年来の規制緩和で、日本の感染者数は今や世界6位で、かって感染者を多く出したヨーロッパ諸国を上回っている。死者数も7万人超でうなぎ登りに増えていて、第8波だけで1万2千人以上が亡くなっている。新しい感染の波が訪れる度に、医療逼迫、医療崩壊が叫ばれるが、新型コロナが流行して3年になっても全く検査・医療体制は整えられていない。これからも起こる流行の度に多くの患者と死者が出ることは明白だ。第8波で亡くなった人の大部分は60歳以上の高齢者だという。5類へ引き下げれば、さらに感染者数が増え、死ぬのは高齢者と言うことになる。5類にすると言っても現在のオミクロン株が変わったわけではない。5類に引き下げる科学的根拠が全く示されていない。引き下げに当たっては、それに対応する検査・医療体制を整えておくのが先決だろう。要は、新型コロナに国の予算は使わない。老人は死んでくれ。という事だ。削った予算を軍拡予算に回すと言うのが透けて見える。
今昔物語の更科の住人は、年老いた叔母を山に捨てた自責の念から、再び山に行って叔母を連れ戻った。浅薄な岸田首相に人情話は理解出来ない。

火事場泥棒                                  2023年2月3日
火事場泥棒は、火事に被災して困っている人の物を騒ぎに紛れて盗むという被災者に追い打ちをかける卑劣な行為だ。岸田首相は、ロシアのウクライナ侵攻に乗じて危機を煽り、これまでの専守防衛の国是を逸脱して敵基地攻撃能力を含めた軍事力の増強を進めようとしている。同様に、ウクライナ危機によるエネルギー資源の逼迫と円安による燃料費高騰が国民生活を圧迫する中で、どさくさに紛れて、福島原発事故以来否定してきた原発推進をあろう事か脱炭素を理由に言い出した。原発は脱炭素社会への転換と真逆だ。太平洋戦争や福島原発事故が悲惨な結果を招いた反省から、他国を威嚇しない専守防衛や原発の段階的削減を国政の基本としてきたはずだ。しかるに岸田首相は国民の声を聞かずに、アメリカの声を聞いて軍事力強化を進め、電力会社の声を聞いて原発推進を掲げている。正にウクライナに於ける戦争を口実に国民不在の悪事を働く火事場泥棒と言うべきだ。今日は節分だ。悪事を働く鬼を皆で豆をまいて退散させよう。

加齢現象は微妙な適応か?                      2023年1月20日
私もそうだが、齢を重ねると体の機能が低下し、故障や病気が増える。しばらく前の朝日新聞の夕刊の取材考記という記事に、「加齢現象に納得? 免疫老化 絶妙な適応かも」という注意を引かれる科学みらい部の記者の記事があった。
新型コロナウイルスで、年をとると重症化リスクが高くなる。重症化リスクを上げる要因の1つを「免疫老化」という言葉で説明していた。「免疫老化」でウイルスを排除する働きが低くなる一方で、働き過ぎによる過剰な炎症反応も重症化につながる。免疫老化の特徴は、働きの低下だけでなく、慢性の炎症、自己に対する反応など一見、相反する現象が一緒に起こることだと述べている。記事の中で、京都大学の浜崎洋子教授(免疫学)によると、老化には悪いイメージがあるが、「適応」かも知れない。長年色々なストレスを経験して性質が変わった免疫細胞が出てきて多様性が増す。少しずつ鈍くなるのは老いた体に優しい対応で、自然に絶妙なバランスをとっているという適応ではないか、と言うのが教授の説です。
適応は、遺伝的背景があって発現するものなので、老齢期に有利な適応形質が進化するのかという問題があるす。これは、否だ。子供を残さない老齢期の個体が進化に貢献することはないからだ。繁殖期まではいかなる調整機能や免疫機能を発揮してでも生存し、子孫を残すという形質が進化する。これは相当なコストをかけてやっているはずだ。繁殖期を過ぎた老齢期の個体はその様な高コストの機能を維持する必要がないので様々な問題が出て来るというのが進化生物学の通説だ。これが加齢だ。ひとつだけ人間が繁殖期を過ぎて長命なのはなぜかという問いに、マッカーサーとコンネルが随分以前に書いたbiology of populations という珠玉のような小冊子があって、その中に老齢期の人間は孫の面倒を見て、孫の適応度(繁殖期まで生き残ってより多くの子を残す)を高めることに貢献するので、長命な形質は進化しうると書いている。人間は成人までの養育期が長いので、特に原始社会では孫を養育できる長命形質が進化した可能性は否定できない。祖父母と孫の近縁度は理論的には1/4だが、小さな原始社会ではもっと高く、長命形質の進化が起こりやすかったとも考えられる。
一方、昆虫や一年生植物は繁殖を終えると直ぐ命を終える。むしろ繁殖期が終わって直ぐ命を終えるメカニズムは何なのか是非知りたい。

木の葉は昼落葉する          2023年1月14日
ようやくアキニレノの落葉が終わり、落ち葉掃きも一段落だ。家の前にエノキ、ケヤキとアキニレノ大きな木がある。昨年の秋からまずエノキが落葉を始め、続いてケヤキが落葉する。アキニレノの落葉が最も遅い。落葉の時期は大量の落ち葉を毎朝掃くのが日課だ。どの木も一気に落葉してくれれば、落ち葉掃きも短期間で済むが、落葉時期はそれぞれの木の種類によって事情があるようだ。大量に落葉する木だが、朝ではなく夕方落ち葉掃をすると、翌朝には葉は落ちていない。木は夜は葉を落とさないのだ。木の葉が雪のように舞って落ちるのを見て感動できるのは、木が昼間に葉を落としてくれるからだ。カラマツの葉が夕日で金色に輝きながら落ちるのは今でも忘れられない。でも何故木は夜は葉を落とさないのだろう。木は昼間葉で光合成で作った澱粉や糖を、夜間木の幹や根に転流させる。木は、落葉させる葉もその前に残った利用出来る澱粉や糖を転流させて回収しているはずだ。夜はその大事な時間なので、落葉させないのではないか。

アキニレは大量の種子を落とす。どうも種子を落とすのも昼間のようだ。落葉時刻が葉と木の間のエネルギー転流の日周リズムに関係しているのではという仮説が怪しくなってきた。でも、落葉に日周リズムがあることは、木が枝と葉柄との間の離層を制御しているはずだ。枝と種子の間にも離層がある。葉を落とすリズムで種子が落ちても不思議ではない。♫小瀬戸に木の実が落ちる夜は・・???

戦争前夜           2023年1月13日
このところ、朝ラジオのスイッチを入れるとNHKニュースは、まず岸田首相が今年5月に開催される広島のG7サミットの議長国として参加国を回っていて、各国との軍事同盟強化の約束や日本の軍事力強化の理解を求めたとの内容を長々と流す。その後、ウクライナの戦争関連のニュースが続く。今朝の新聞の一面のトップも、米国との外交交渉で「日本の軍事力強化を米国が強い支持」、「敵基地攻撃能力の深化協力」で一致という大きな文字が躍る。これは日本全土が米軍の軍事基地となる約束だ。テレビのニュースもおしなべて同じようなニュースを無批判に流す。台湾での軍事訓練のニュースも流れる。戦前マスコミは政府と一体となって戦争の危機を煽って戦争に突入していったのではなかったか。広島で行うG7サミットの主題が軍事同盟の強化や軍事力強化では、平和都市広島が泣く。軍事同盟による威嚇が、ロシアにウクライナ侵攻の口実を与えたことを思い出すべきだ。世界の政治リーダーを自認するなら、広島で世界の平和構築、経済発展・協力、地球の環境問題こそ話し合うべきだろう。一方、国内では物価高、新型コロナ、低賃金、貧困等々国民は日々の暮らしにきゅうきゅうとしている。加えて国の巨大な借金が国民にのしかかる。戦争準備どころではない。聞く耳も見る目も失った岸田首相の外交姿勢は正に異次元と言うべきだ。国内の貧困な政策に対する国民の不満をそらすために、国外に敵国を作り「文句を言うな。危険な敵が国外にいる。こぞって我慢・協力しろ」と言うのは、歴史的にどこでも無能な政治リーダーが権力を維持するための常套手段だ。鬼畜米英、鬼畜米英・・・鬼畜中露北、鬼畜中露北。軍靴の足音が聞こえてこないか。
日本は先の大戦の反省から、武力による威嚇や武力の行使を国際紛争解決の手段に使わないと決めたはずだ。私の母は常々、二度と戦争は嫌だと言っていた。我々の知性で今何が大事なのかよく考えよう。

日本は戦争をするのか? 何のために?     2022年12月21日
日本は戦争をするのかー集団的自衛権と自衛隊 半田 滋著 岩波書店(2014)を読んだ。第一次、第二次安倍内閣のもとで、専守防衛のための自衛隊が、憲法で禁止されている戦争をするための軍隊に変質していることが詳細な資料や調査・分析から示されている。特にカンボジアPKO、特措法によるイラン派遣、アフガニスタン派遣、南スーダンPKOで、国内から見えない場所で武器使用や外国軍隊への警護、弾薬供給、兵員輸送など、戦争をする軍隊への足場固めが着々と行われ、憲法を空洞化することが行われてきた。それは、文民統制(シビリアンコントロール)から外れて、制服組が主導権を握って進められている。そこには国民を守るという視点はなく、戦う強力な軍隊を構築することが目的化している。それは、かってアジアを開放するという口実で他国の資源を奪うために、国民を犠牲にして戦争を行い悲惨な結果をもたらした旧日本軍と変わらない。本書は2014年に出版されているが、さらにそうした動きが加速されていることは容易に想像できる。しかし今、自衛隊を戦争するために強大化する目的は何なのか。岸田内閣は日本を取り巻く安全保障環境の悪化を理由に敵基地攻撃能力を備えるとして、全国に長距離弾道ミサイルを多数配備ことも含めて防衛予算を現行の1.5倍にすると言う。この本によると、2014年当時であるが、弾道ミサイルを迎撃する地対空ミサイルPAC3の発射機は全国で32基あるに過ぎない。しかし全国を守るには発射機は一千基以上必要で、日本の防衛システムは実はミサイルを100%迎撃するなど望むべくもない「破れ傘」でしかないと明確に述べている。相互にミサイルで攻撃し合えばどうなるか、結果はウクライナの現状を見れば明白だ。自衛隊はもう一度原点に立ち返って、武力によらずわが国や地域の平和に貢献する世界でも希有な軍であることこそ評価され価値がある。